バッハのティータイム

音楽についてだらだら書く(主にクラシック)

ブルッフ バイオリン協奏曲第1番

 どうでもいいことであるが、筆者はバイオリン奏者である。

 

 ……

 ということで、今回はバイオリンをある程度やっている人なら必ず通る道ブルッフの紹介。


Bruch: 1. Violinkonzert ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Hilary Hahn ∙ Andrés Orozco-Estrada

 だいたい簡単な曲を弾けるようになるとじゃあ少し難しいコンチェルトでもやろうかという流れになり、だいたいその入り口にあるのがこの曲である。

 一言断っておくと、(他の協奏曲に比べて)とっつきやすいというだけであり、決してこの曲は容易なものではない。チャイコフスキーとかシベリウスとかあのあたりに比べたらまあ簡単に思えるけれど、「ブルッフ? あー簡単だよねー」とか抜かす奴に限ってちゃんと弾けないから引け目に感じることはない。

 とはいえ特別すごい技術を要さないのでとりあえずとっつくには最適なのである。大変なのは10度が出てくるところだろうか。まあ第3楽章は普通に難しいと思う。

 

 そもそもこのブルッフというオッサンはドイツ生まれの後期ロマン派の作曲家である。詳しくはwikiを参考にと言いたいところであるが、そのwikiにあまり説明が詳しく書かれていない。要約するとバイオリン協奏曲とスコットランド幻想曲だけの一発屋であることが書かれているが、まあ悲しいことにその通りである。

 筆者は興味があったのでブルッフのいろいろな曲を聴き漁ったところ、交響曲にたどり着き、聞いてみたところ特に第3番が本当に素晴らしい。いつか紹介文を書こうと思うけど、あれは素晴らしいぞ…

 

 ブルッフユダヤ教徒疑惑をかけられて、ナチスに演奏を禁止されてされてしまったせいで現在までその知名度が轟かなくなってしまったようである。非常にもったいない。あんなに綺麗な旋律を書ける作曲家はそうそういない。

 世にメロディメーカーはたくさんいるけれども、緩徐楽章における旋律美でブルッフの右に出る者はいないと断言する(筆者比)。ゆったりしたメロディがマジで美しいからいっぺん聞いてほしい頼むから!

 

 ブルッフのバイオリン協奏曲であるが、第一楽章にまず"Vorspiel"と書かれている。前奏曲という意味である。つまり、この第一楽章は前奏曲扱いなのである。

 では何がメインに据えられているかというと、実は第二楽章。緩徐楽章がこの協奏曲の中心なのである!!!! きました旋律美!!!

 第一楽章は重々しい雰囲気のト短調。中間部では美しい旋律が顔を出し、ここがまた綺麗なんだけどまた重々しい雰囲気に戻り、アルペジオを経てオケのtuttiが挟まれる。悲しいんだけどぶっちゃけこの楽章の一番カッコイイところってここのtuttiなんだよね…ソリストここ弾きません…でも確かサラ・チャンの演奏見てたらあの人tuttiの部分弾いてたな。

 まあともかく割と短い第一楽章が終わるとアタッカで第二楽章へ行く。でね、この第二楽章がね、またなんともたまらない超美しい曲なんですわ…

 すっごい綺麗。綺麗の一言に尽きる。美しい女性の祈りのような高潔さすら垣間見えるような神聖さを併せ持った楽章である。ああ語彙が足らん…

 筆者はおそらくブルッフを練習した時にこの楽章に一番時間を割いている。これを綺麗に聞かせようとしたら普通に難しい。音楽的なセンスとかを習得しなければならないので、譜面ヅラをなぞるだけではこの曲はいつまで経っても弾けるようにならないのである。ブルッフだけに言えることではないけれど。

 どうしてここにこの記号があるんだろう、ここのスタッカートとかテヌートの意味は? dolceで弾くにはどうすればいいだろうか? それがちゃんと自分の中でわかれば聞いている人に強烈な感動を与えれると思う。ちなみに俺はどうなんだと言われると微妙である。だってむずいもん

 32小節目のEsの伸ばしなんてもうたまらないよね…わかる人だけでいいです…筆舌に尽くし難いというほどにこの曲の魅力は語り尽くせない。ほんとすこ…

 で、第3楽章。ま、これは勢いでやってしまえる。というか勢いがなかったらショボい。明るく突き抜けた曲であるが、冒頭からダブルストッピングが出てくるという初心者殺しの曲である。んですぐに10度が出てくる。普通に技術的にむずい。ので、筆者は1ページ目にして心が折られ、別の曲に移行する運びとなった。まああまり語る場所はない…かな…普通にいい曲。

 

 wikiを見ると第3楽章の冒頭のメロディについてブラームスのバイオリン協奏曲との類似性を指摘されていると書かれている。まあ確かに似てるんだけどさ、そもそも作曲されたのはブルッフのほうが先であるので、このブラームスのをパクったみたいな言い回しはおかしいこんなことは許されない。つかブルッフのコンチェルトを聞いたブラームスが「ワイでもこんなもん作れるわ!」っつって作ったのがブラコンなので、おそらくパクったのはブラームス側であると思われる。クソ、知名度において負ける奴を貶めようとする姿勢を感じずにはいられない。忌々しい…

 

 

 筆者はイツァーク・パールマン信者である。彼は誰がなんと言おうと世界一のバイオリニストである。 

 

 

 メンコンも収録されているお得な一枚。彼のキラキラした音での第二楽章はもう絶頂モンですよ

 

 あと、冒頭の動画のヒラリー・ハーン。彼女も上手い。あと十年くらいしたらまた角が取れて味が出てきてさらに洗練されると思う。CDはなさそう。

 

 五嶋みどりなんかも上手いですね。細くて力強い音が好きな人は彼女の音は好きなんじゃないでしょうかね。

 

 

 

 

 

 オイストラフもイイ。天才。

 

 

 最後に、バイオリンの王者ハイフェッツ。でも筆者は好みではない…技巧系弾かせたらすごいんだけど歌ったりするのはあんまりってイメージ。まあその辺は好み。この人のおかげでスコットランド幻想曲が日の目を浴びたという功績があるので、ブルッフ好き的にはポイントが高い。

 

 

 というわけで、ブルッフの真髄は旋律美にある。

 交響曲第3番の第二楽章とか本当に素晴らしいので機会があったら是非聞いてほしい。もっと日の目を浴びろブルッフ。お前はそんなもんじゃないはずだ。

 てかプロがもっと注目しろ。

 

 

 

 結論:ブラームスの協奏曲はブルッフパクリオマージュ

 

 

 

 

チャイコフスキー 交響曲第5番

 第一回目なのでとりあえず分かりやすいものから。

 

 ……

 

 通称チャイ5。

 言わずと知れた名曲。超かっこいい。

 が、これが好きと豪語してる奴は正直言ってニワカくさい。

 なぜかと言うと耳に易しく分かりやすいからである。これからクラシックを聞こうとする人には「あれ、なんかクラシックもいいな」と思わせるような最適な曲だと思う。ざっくり言うと非常に初心者向けの曲なのである。

 だからこれが好きと言っている奴は自称玄人さんたちに「くっさ」とばっさりニワカ認定されがちである。

 

 だがあえて言おう。筆者はこの曲が好き。すこなんだ…w

 

 どの楽章もメロディが素晴らしい。さすが稀代のメロディメーカーチャイコフスキー

 そして、まあ聞けば分かるが、絶望からの勝利という構図がとても分かりやすい 第一楽章の短調の主題が最後で長調となってトランペットが高らかに歌い上げるところなんてもう素晴らしいですよほんとわっかりやすいなこの曲。それは作曲者自身も理解していたようである。当のチャイコはやはり大衆受けする内容は気に食わなかったらしい。

 だが、駄作認定していたこの曲が世間で賞賛を受けるや否や、評価を180度改めてしまったチャイコ。なんJ民のような熱いひら返しをしたのは彼の沽券に関わるからあまり言わないようにするけれどまあ気分よくなっちゃったんでしょうな。

 

 筆者はこの曲を何かの締め切りに追われている曲だと勝手に思っている。

 締め切りまであと一日しかないやん詰んだ…みたいな第1楽章、諦めムードに光がさす第2楽章、正直言っていらない第3楽章、課題に立ち向かう第4楽章…そしてデッドラインに間に合って勝利の歓喜に酔いしれながら曲は終わるのである。

 

 素晴らしい。まさしく完全勝利の曲である。こんなストーリーを描いた奴が交響曲第6番悲愴という怪作を作り上げてしまうのだがそれはまた別のお話である。鬱になる以外なら欠点ないと思うんだよなあ。あとホモなくらい。

 

 これ聞くと毎度思うんだけど、第3楽章いらねえよな?

 交響曲の構成上まあ挟んでもいいんだけどさ、こう一連のストーリーみたいなのが出来上がっている曲にその構成を当てはめようとすると、ちょっと無理が生じてしまうというか、余計な部分になってしまっている気がする。というか、あまり上手くスケルツォ楽章を使えていない。

 まあ作曲者自身もこの第3楽章の扱いに困ったのか、スケルツォの代わりにワルツを代用してみました〜みたいな実験的な遊びをしている。もういらないなら潔くカットしなさいよ! しかも途中からスケルツォになっちゃってるし。あの速いとこ(筆者が勝手に思っていることなので話半分にしてください)。

 

 筆者がよく聞くというかベストな音源はこれである。

 

 

  カラヤンとベルフィルという鉄板の組み合わせ。71年録音。通説によると73年(定かではない)が一番いいとか言われているがそんなものは自称玄人に言わせておけばいいのである。

 カラヤンって全ての曲の模範解答のような音楽なので、とても安心して聞いていられる。解法は山ほどあるけれど、その中でも洗練された分かりやすいものというような感じ。バーンスタインと対比されていたが、まあその通りで奴はテンポ設定などでめちゃくちゃ冒険するタイプである。まあ、あれはあれでアリ。

 

 この音源の何がいいって、まあいくつかあるんだけどさ。

 第一楽章のラストたたみかけるところ、バーンスタインとかゲルギエフのやつ聞くとここをめっちゃ遅くするんですよ。わけわかんないくらい溜める。かけっこで最後手抜いて走らんやろ? いや駆け抜けろって。君らかけっこで最後手抜いて走らんやろ? その点カラヤンはちゃんと駆け抜けてる。

 第四楽章のコーダに入る前も同様。なんでここ遅くするのが結構あるんかな、突っ切って行ってほしいんだよな。

 

 ということで、基本的に作曲者のテンポ設定に従うカラヤンさんなのでとっても聞きやすくてオススメな名盤。後期交響曲全部入ってるし、安いし。あとバレエ作品とかも収録されてるし。

 余談なんだけどこのCDって交響曲+小品っていう組み合わせになってるんだけど眠りの森の美女と白鳥の湖はあるのに、くるみ割り人形だけ収録されていない。かわりに1812年が収録されてる。

 時間の関係上仕方なかったんだろうけどもやもやする。

 

 でも世間ではなぜかチャイ5はゲルギエフみたいな風潮があるので、一応貼っておく。評価高いのはロシア人だからだろうか…

 

チャイコフスキー:交響曲第5番

チャイコフスキー:交響曲第5番

 

 

 この前マリインスキーとゲルギエフのチャイ5聞きに行ったんですよ。めっちゃ上手かったんだけど、ラストのだだだだんってとこ、溜めすぎィ! 最後も手抜かないで駆け抜けろお前! 急にリテヌートするからびっくりして急に現実に引き戻されてしまったというお話。

 

 あとカラヤンの時代ならムラヴィンスキーもロシアサウンドとか言われてるが少々荒っぽい気がする。それがロシアなんだろうか…

 

チャイコフスキー:交響曲第4-6番

チャイコフスキー:交響曲第4-6番

 

 

 まあ音源は数あるので自分の好きなものを見つけるのが一番!

 一番最初に聞いたものがオリジナルとして認識されるらしいので、聴き比べるとどうしても後で聞いた音源だと変だなって思ってしまう節は否めない。けどそれにも良さはあるのでそれを探してみるのもまた一興。

 というわけで、たまには別の版のチャイコフスキーでも聞いてゆっくり過ごしてみてはいかがでしょう。

 ではこのあたりで。

 

 

 

 

 結論:チャイ5は神